スペクトル色
を理解する

光のスペクトル

スペクトル色(spectral color)とは、人間が知覚することができる特定の単一周波数で表現されるの色のことです。光の元の色、もしくは虹の色とも言えるでしょう。

色は科学的には特定の領域の電磁波、つまり波です。波である以上、波長(波と波の間の長さ)や周波数(一秒間の波の数)を数値で表すことができます。これは、sRGB値やYMCK値といった人間が利便性のために、ある意味勝手に考案して使っている値とは違い、科学的に絶対の値です。まあ、絶対と言いつつもその波長は “だいたいこのくらい” でしかないのですが。

下の図では、波長750nm(ナノメートル)から波長380nmまでを人間の見える光、即ち可視光線として表しています。

 

スペクトル色の波長一覧

赤よりも外側が赤外線(infrared)、紫より外側が紫外線(Ultraviolet)です。ここで日本語的に面倒な点が、可視光線の端っこの紫は「Purple」ではなく「Violet」です。

  • Violet(赤紫):スペクトル色

  • Purple(純紫):非スペクトル色

紫外線の「紫」はVioletであって、Purpleではありません。UVカットはUltravioletをカットするわけで合って、Ultrapurpleなんていう光線をカットするわけではないですね。

そして、そのグラデーションで表された帯の中の色がスペクトル色なのです。特定の単一周波数、というのはつまり、この帯のどこか一点ということですね。例えば赤と白を混ぜ合わせたピンク色はスペクトル色ではないことが分かります。

 

CIR yx 色度図におけるスペクトル色

以下のCIR yx 色度図における、 ひづめの形の線、即ちスペクトル軌跡上の色を指します。というより、元々はスペクトル色の帯を環状八号線のようにぐるっと丸めたのがスペクトル軌跡ですね。

先に述べたように、複数の光が混ぜ合わさった色、即ちひづめの内部の色は非スペクトル色です。左下の頂点(バイオレット)と右下の頂点(赤)を結んだ線(純紫軌跡)の上にある色も非スペクトル色です。

color_gamut

 

そしてその中に、sRGBCMYKの領域がだいぶ控えめに広がっていますね。

……そうすると、sRGBCMYKで表現できる色域に、スペクトルカラーがないように見えますね。上にスペクトル色として表示されている色はいったい何なのでしょうか。ウソでしょうか。 

実際、ウソと言えばウソです。あくまでイメージです。sRGBCMYKも純粋な光のスペクトラム色を再現するほどサチュレートする(=彩度を上げる)ことはできません。 

例えば、ヘリウムネオンレーザーを使えば、可視スペクトル上にある波長の632.8nmの赤の色を再現することができます。その一方で、印刷物でレーザーと等価の鮮やかさが出せるかと言われると、それは言わずもがなです。本に載っているスペクトラム色も、やはりイメージなのです。

とはいえ、人間の視覚上不都合がないレベルではサチュレーションを上げられているので、それっぽく見る分には充分であるわけです。

 

話を色度図に戻しましょう。

これを見ると各カラーモデルで再現できる色と、実際のスペクトル色との乖離具合が一目でわかります。

たとえば、CMYKの領域は、黄から赤にかけての領域は、ある程度スペクトル色まで手を伸ばせているような感じはしますが、青や緑は絶望的です。sRGBは、青方面はやや善戦していますが、やはり緑方面は苦手そうです。Adobe RGBは緑領域への大幅な改善が見られます。とはいえ、やはり純粋なスペクトル色への到達まではまだまだスペースがあります。

そもそも、仮にAdobe RGBを使用して画像を制作したとしても、見る人間がそれを再現できるデバイスを持っていなければ意味がありません。結局、Web等のデジタル制作の範疇をでないのであれば、スペクトラム色は、色を考える上での理論の値としてとらえておけば十分なのでしょう。

デジタル制作のためのカラーリファレンス