マンセル表色系
を理解する
~ はじめてのマンセル ~
このページは「色相、彩度、明度」の考え方を理解している方向けです。また、当サイトで表示されている色はあくまで参考値、もしくはイメージになります。正確な色は印刷された色見本を参照ください。
表色系のボス、マンセルさんの登場です。各パラメーターは以下の通りです。
- 色相はHue(ヒュー)と呼ぶ
- 明度はValue(バリュー)と呼ぶ
- 彩度はChroma(クロマ)と呼ぶ
なんだかどれも、意識高い系のビジネス用語みたいですが、基本的には一般的な意味での色相、明度、彩度と同じです。ただ、もちろん「マンセル的な」な考え方も持っていますので、PCCS等、他の表色系と比べながら見ていきましょう。
マンセルの色相の仕組み
まずは色相(ヒュー)から見ていきましょう。
例によって色は参考値であること、ご了承ください。マンセルの色相環は10色相です。プライマリーカラー5色(アルファベット1文字)とその中間色5色(アルファベット2文字)から構成されています。
円は360度である都合上、12進数を使う色相環が多いいので、10は珍しいですね。これは、マンセルは色相環の出発点を、よくある三原色ではなく五原色としているからです。彼は特に「紫」を入れることを重要視していました。
マンセルマスター最初の一歩は、この10色相を把握することです。日本語名も一緒に覚えようとするとごちゃごちゃになるので、一旦日本語の名前は忘れましょう。あと、アルファベットにくっついている5については、この後すぐ出て来ます。
中間色のアルファベットの順番は、Rから 反時計回りに 見ていくとわかりやすいかもしれません。R、P、B、G、Yの順番に連なって並んでいます。
【R】→【RP】→【P】→【PB】→
【B】→【BG】→【G】→
【GY】→【Y】→【YR】→【R】
時計回りの方が方向としては収まりがいいのですが、中間色の後ろのアルファベットが変わっていくというのが、直感的にちょっと頭に入りにくいので上のような説明をしています。覚え方はお好みでどうぞ。いずれにせよ、色々とやっているうちに、順番とか関係なく頭に入って来るはずです。
さて、マンセルの色相環は10色相で構成されていますが、各色相はさらに細かく10分割することができます。
こんな感じです。分かりやすいように色票(ボックス)内もグラデーションかけていますが、実際は単色です。このように色票ごとに色を持つ仕組みを「顕色系」と言います。
各色相ごとに 時計回りに 1から10までの番号が振られます。YRの色相であれば
1YR、2YR、3YR、4YR、5YR、6YR、7YR、8YR、9YR、10YR
となりますね。各色相のグラデーションで、真ん中の5がつく色が、各色相の代表色となっています。上のものは便宜上10等分してありますが、実際は各色相内の任意のポイントを少数を含めた数字で指定することができます。例えば、5YRと6YRの中間よりちょっと6YR側であれば
5.7YR
といった感じで表現することができます。
マンセルの色相のポイント
使われる数字は 1 – 10
上でお話ししたように、マンセル表色系の色相は10進数で指定されます。ただし、0は使われていないことに注してください。
通常の10進数は
0, 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9
で10になると繰り上がりますが、マンセル色相では
1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10
で、10の次に、次の色相の1となっています。
色相の記号と感覚が一致しないものもある
色相記号BはもちろんブルーのBです。しかし、見て分かるようにBの代表色5Bは、私たちがイメージする「青」とはかけ離れています。PCCSの「青」(17:B、または18:B)は、もっと一般的な青のイメージに近い物でした。各表色系は、意味や記号に互換性があるわけではなく、あくまでそれぞれの考え方に則って構成されています。この辺りは混乱しないように注意する必要があります。
マンセルの明度の仕組み
次に明度(バリュー)を見ていきましょう。よくあるグレースケールの明度表となっています。
実際には作れない理想的な白を明度10、理想的な黒を明度0としています。明度10と0は作ることができないので、実際のマンセルの明度は1から9.5となっています。
最大値が既に少数点を含んでいますが、5.5 や 3.9 など、色相と同様に1から9.5の任意の値を取ることができます。
マンセルの彩度の仕組み
次は彩度(クロマ)です。
マンセル表色系では彩度は無彩色からどれだけ離れているかの「距離」を示していると考えられます。オストワルト表色系やPCCSと違って、特定の最高彩度を決めてそこから等分しているわけではないのです。
これはつまり、最低彩度は無彩色、つまり彩度0ですが、最高彩度が存在しない、ということになります。これが、なぜマンセルでは彩度がサチュレーションではなくクロマと呼ばれるかの理由なのですが、ごちゃごちゃするので、それはまた別のページで説明しましょう。
彩度リミットなしとはいえ、現実世界で再現できる彩度には限界があります。当時マンセルが再現できた最も彩度が高い色相が赤(R)であったことから、その R の彩度を10と決めてそれを基準としました。その後、より鮮やかな色料が開発されるに従って、彩度の限界は大きくなってきました。
JISでは現実的な最高彩度を各色相ごとに定義してあります。そして、前述の通り、事前に最高彩度を決めて分割しているわけではないので、再現可能な最高彩度が各色相ごとに異なってきます。
明度と彩度について分かったところで、マンセル表色系の等色相面をみてみましょう。
こんな感じです。スペースの関係で彩度のメモリを2ずつにしています。
5Rの最大彩度は14ですが、色相によっては最大彩度がもっと低いものもあり、その場合は三角形の右側の頂点がもっと明度軸に近づくことになります。
また、最高彩度色の明度も色相によって異なります。つまりこの横向きの山の頂点がもっと上(高明度)である場合も、下(低明度)である場合もあります。
山の形が色相ごとに異なるため、当色相面を無彩色を軸にくるっと一回転させて色立体を作成しても、綺麗な二重円錐のかたちにはなりません。
マンセル値の表記法(HV/C)
マンセル表色系では、今まで見てきた色相、明度、彩度の数値を組み合わせて、特定の色を指定することができます。
色の指定には HV/C という記述方式を使います。アルファベットはもちろん、Hue(色相)、Value(明度)そしてChroma(彩度)の頭文字です。
先ほどの等色相面の、この(黒やじるしの)色を指定してみましょう。
上で指定している色の各要素を見ていきましょう。
- 5Rの等色相面であるため、色相は5R
- 縦軸の明度は5
- 横軸の彩度は10
これをHV/Cに当てはめると以下のようになります。
5R 5 / 10
この表記方法を「マンセル値」と言います。
そこまで難しい仕組みではないのではないかと思います。例えば、矢印で指した「5R 5/10」の斜め左上の色は「5R 6/8」になります。
また、「5R 5/10」とその一つ下の「5R 4/10」のちょうど中間の明度だった場合は、「5R 4.5/10」となります。少数が出てくると、すごく複雑なパラメーターに見えてしまいますが、ビビらないでください。なんのことはない、ただ場所を示しているだけです。
続いて、無彩色を見ていきましょう。一番左側の明度の列ですね。
この矢印の色を HV/C に当てはめてみましょう。
……といっても、グレースケールなので、明度しかありません。彩度は0ですし、色相に至っては存在しません。よって、明度の値である 6 だけを使うことになるのですが、6だけ書かれても何だか意味が分かりませんね。というわけで、無彩色の場合は明度の数字の前に「Neutral ニュートラル」の頭文字、Nを付けます。
N 6
Neutral とは、中立の中間のという形容詞ですが、「heu」を持たないという意味もあります。「neutral color」というと無彩色、もしくは彩度明度があいまいな中間色になります。
マンセルの色立体の仕組み
マンセル表色系入門の最後に、色立体の登場です。
マンセル表色系では各色相の最高彩度、及びその明度が異なる、というよりバラバラです。そのため、全ての色相を無彩色軸を中心に放射状に並べた色立体は、とても歪な形になります。
ナチュラルハーモニーを取り入れているPCCSも、各色相の明度にずれがありますが、一方で彩度はどの色相も9固定であるため、「銘菓ひよこ」のように球を斜めに押しずらしたような形になります。銘菓ひよこの知名度は分かりませんが。
しかし、マンセル表色系は、彩度も明度も異なります。もちろん、意図あってそういう形になっているというものの、パッと見た感じはバラバラです。マンセルさん自身この色立体を、明度を幹に、そして好き勝手に腕を伸ばしているような明度と彩度を枝になぞらえて、「カラーツリー」つまり木の様だと考えました。
…… 上手いこと言いましたね。